トンカチくんは電車に乗っています。
次は池袋駅です。トピらの上の扉の上のLEDの表示をチラチラと確認します。 電車が止まり、立ち上がり、扉が開きます。 トンカチくんにとって電車とホームとの間隔は結構広いです。 軽く電車の中で2、3回ウォームアップのジャンプをしてから、ぽーんとホームへ飛びうつります。ゴムのグリップがしっかりとホームの床を掴んで着地します。
トイレを済ませて改札を出たら、人の流れの邪魔にならないところで待ち合わせをします。そこから見える駅の時計をチラチラ見ながら待ち合わせです。
しばらく行き交う人を眺めながら待っていると力士くんがやってきました。まげは結っていますが、私服です。バスケ部みたいな服を着ています。
2人は特にこれといった目的地もなくいつものように散歩をします。
池袋には漫画の週刊誌がよく落ちています。 今日はあまり落ちていないようですが、やはり15分ほど街を練り歩いていると落ちているのを見つけました。 まだ落とされて日数は経っていないのでしょう。そんなに汚れていないようです。ここ数日晴れ続きだったのもあり、状態は良いです。
力士くんがその週刊誌を拾い上げ、軽く砂ぼこりを払います。
池袋で週刊誌を拾ったら、街にいる薄着の人の体に打ち付けるというふうに2人は決めています。打ち付けると言っても釘は使いません。力士くんがトンカチくんを使って何か物を叩くと、釘を使わなくてもその物は不思議とくっついてしまうのです。
ちなみに、漫画の週刊誌を体に打ち付けるとその部分はじわじわと暖かくなります。週刊誌自体から熱を発しだすのか、それとも週刊誌に触れた体の部分だけ熱がこもるからなのかは定かでありませんが、とにかく週刊誌を打ち付けられた薄着の人はその部分だけじわじわと暖かくなります。
もちろん真夏の暑くてたまらない日はそんなことはしません。そういう日はそもそも散歩をしませんから。
2人はかなり遠くまで歩いてきたようです。もう15時半を過ぎました。そろそろ足が疲れてきたので喫茶店に入ることにしました。ここまでで拾った週刊誌は2冊です。
店に入るとカウンターの中のマスターの姿が目に飛び込んできました。どう考えても薄着です。こんなにクーラーが効いているのにどうしてあんなに薄いのか。薄い。あまりにも薄すぎる。
トンカチくんと力士くんはテーブル席に着き、それぞれホットコーヒーとアイスコーヒーを注文しました。
程なくしてテーブルにコーヒーがやってきました。
ミルクをテーブルに置いたところでマスターがはたと動きを止め、トンカチくんに視線を向けました。そのトンカチくんを力士が右手でゆっくり握りしめます。動きを止めたままのマスターの右手の甲に、力士くんは週刊誌を打ち込み始めました。
会計を済ませて店を出て2人は今日はもう帰ることにしました。
小雨がふってきました。2人は用意がいいのでそれぞれ持ってきた折り畳み傘を出して差しました。傘にぱらぱらと雨が当たる音が聞こえました。
おしまい。